スーパーアニメーター西澤晋さんがおすすめする絵の上達法

イラスト・絵の練習

スポンサーリンク

ネットサーフィンしていたら面白いページを見つけました。その名も「西澤晋のホームページ <日々の戯言掲示板>」。

あのスーパーアニメーターとして名高い西澤さんのHPの掲示板です。

早速ご本人に確認取らせていただいたところ、こちらはもう終了しているサイトとのことですが、まとめて大丈夫と許可を頂きましたので、ためになりそうなことをまとめさせていただきます!西澤さん!ありがとうございます!

読むだけで新しい発見があると思います。

ちなみに西澤さんのサイトはコチラ『西澤晋のホームページ <日々の戯言掲示板>』→http://www3.ezbbs.net/cgi/bbs?id=ssm2438&dd=12&p=6

*現在はこちらのサイトの運営を終了されているそうなので、質問など書かれても西澤さんによるお返事はできませんので、ご注意ください。

【絵の上達のために!Q&A】以下原文をコピペ

【Q:模写におすすめのマンガは?】

暇が出来たときにでも漫画でも模写しようかなと思っているのですが、模写するにあたり西澤さんがオススメする漫画とかありますか?あったら教えて欲しいのですが

【回答】

模写ですか。

上手いのは安彦良和さん。
アニメーターあがりなので、動きの感覚とかとってもうまいし、カラー版なんかをみると、照明効果を意識した絵作りをしてる。もちろん漫画っぽいところもあるのだけど、映画としてとられた画面を意識してつくられているなあって思うかな。

あとは浦沢直樹。
このひとはキャラクターンのバリエーションが豊かだ。

日本人の顔がうまいなあって思うのは『哭きの竜』や『月下の棋士』の能條純一さん。

『ヒカルの碁』や『デスノート』の小畑健もいいよね。

コマ割とか、総合的な見せ方が上手いともうのはあだち充。

樹や森が上手いなあって思うのはやっぱり『釣りキチ三平』の矢口高雄。

動きのダイナミズムだったら『バツ&テリー』のころの大島やすいち。個人的には『勇太やないか!』が好き(最近はちょっとだめだ・・)。

全体的にタッチや効果線でごまかしててるひとはダメだ。それを省いた時の絵を想像すると、動きもセンスも感じないひとがおおいようなきがする。

・・・おもいつくままに書いてみました。

【Q:この人たちを模写するのどう?】

初めまして。naoと申します。西澤さんが出している本を読んで西澤さんを知りました。質問なのですが模写するイラスト・漫画として、矢吹健太朗さん、藤島康介さん、大暮維人さん、天野こずえさん、ヤスダスズヒトさん、久保ミツロウさん、瀬尾公治さん、鈴平ひろさん、むりりんさん、Tonyさん、ではどの方の漫画・イラストなら力がつくでしょうか?前に模写の質問が出ておりますが、どの漫画家の本も持っていなかったので改めて質問させていただいたしだいです。
お答えいただければうれしいです。
では失礼いたしますm(_ _)m

【回答】

どう返事しようかとなかなか思案がまとまらなくて・・。
まだまとまってないけど。

正直話は、誰がどんな絵を描いているかわかんなくて・・・これをジェネレーションギャップって言うんですね。なので、どれがいいってのは私からは言えないかな。

ただ、私が言えることは、自分が、「この絵は良い」って思ったら最後、その絵は自分が越えるべき目標になるということ。まねる目標じゃないのです。まねるために描くんじゃなくって越えるために描く。

今の私はジン・G・カム(Jin.G.Kam)っていう人の絵が好きです。
「これを越えるのか」って思うとそのハードルの高さにうんざりるす。

【さらにQ:解剖学は必要?】

丁寧なご回答ありがとうございます!
「この絵は良い」って思うことが多いということは、それだけ超えるべきハードルがたくさんあるっていうことですね。これからもがんばりたいと思います。

忙しい中立て続けで申し訳ないのですが、イラストを描く上で解剖学的な知識(筋肉など)はやはり必要でしょうか?
イラストが上手な知人は、量をこなしているうちに何となくわかると言っていたのですが、自分は筋肉などが分かったうえで描くというのでなければ、自分の描きたいポーズを手本なしで描けないように思うのです。いかがでしょうか?

また、現在の自分の練習方法なのですが、模写するときに正中線や背骨、骨格を意識したアタリから描く、筋肉を時々本を見て覚えるなどなのですが練習法で何かいい物はないでしょうか?
プロで活躍されている方の意見も聞いてみたく書きこませていただきました。またお答えいただければ幸いです。それではm(_ _)m

【回答】

絵を上手くなろうとおもったら、とにかく描くことなのです。下手でもなんでも、数をかくことなのです。上達するかしないかは消しゴムのカスの量できまるのです。なんども描いて、「いや、こうじゃない。もっと正しい線があるはずだ!」って追求している。
それが分らなくなったら、上手い人の絵を模写してみる。そうしてると、なんだか、それらしいものが見えてくる。

でも、好きになったら、それは越えるべき絵になってしまう。否定するべき対象になってしまう。どう描いたらこれい以上のものができるのか・・って。求道者の宿命です。

解剖学的な知識(筋肉など)は、だんだんと必要になってきます。もっと真実の線がほしいって思うとどうしても頼ってしまう。ただ、筋肉がついている人の身体が真実の身体だとはおもえないですけどね。
でも、そこには理屈があるのです。動く時に、どの筋肉が、骨のどの部分を引っ張るから動きが実現するんだ・・って。ただそれは理屈論で、実際人間の身体には脂肪がついてて、筋肉がそのまま線になってあらわれることはない。リアリティってのは、理屈を説得するネタなのです。われわれがリアル(現実味がある)って感じるのはそこに理屈を感じるからなのです。

で、現実をもとめるのは、ファンタジーを求めるのか、そこで描く人の価値観が違ってくると思います。

私は現実のものを自分で再現できる力がほしかった。
好きな女の子がいると、その人の笑っている顔を、実在のものを見なくても描ける力がほしかった。だから努力した。ロマンチストなのです(笑)。

ファンタジーをファンタジーのまま愛したいのなら、特に理屈を追求する必要はないと思います。ただ、ファンタジーを、少しでも現実の線に近づけたいって思い始めたら、筋肉などの基礎知識は必要になってくると思います。

多分「愛」ですよ。
自分が描きたいと思うものに、真実の線を与えたい・・ていう。

【Q:レンズの知識とうそのつき方に関する知識どうしよう】

人体とか背景だと筋肉やパースなど情報が割りといろいろ落ちてるので非常に勉強しやすいのですが、レンズと嘘の付きかたに関しての知識があんまり無くて困ってます。
絵とレンズの関係について説明している情報は西澤さんの本とこのHPの情報でしか見た事がありません。
嘘の付きかたに関しては自分の研究程度の知識しかありません。

例:ベッドに寝ているキャラと立っているキャラが居て、立っているキャラより上からのカメラアングルなのに立っているキャラの顔が見える。

これらに関して何かいい情報とか本とか知識とかありませんでしょうか?

これらに関して何かいい情報とか本とか知識とかありませんでしょうか?
他のアニメーターさんにも聞いてみたんですがやるしかないよって事でした。
想像でも何でも見た事無いようなもんでも崩してみたりパースぐちゃぐちゃにしてみたりやってみるしかないんですかね。

【答え】

例:ベッドに寝ているキャラと立っているキャラが居て、立っているキャラより上からのカメラアングルなのに立っているキャラの顔が見える。

>想像でも何でも見た事無いようなもんでも崩してみたりパースぐちゃぐちゃにしてみたりやってみるしかないんですかね。 

自分が想像できないものはかけません。
だから自分がもっている実在のイメージの引き出しを常日頃から増やしていくことが大事です。たとえば「なだれ」のシーンを描くことになると、「あの映画のあそこになだれのシーンがあったな。あの映画にもあったな、あ、あの映画にもあった。じゃあこれでいこう!」って芋エージの方向性を考えるものです。上手くなる人ほど、自分がまだまだ描けないということを知っているから、実際にどう見えるのかを確かめてから描く習慣ができているのです。

たとえば、そのベットのシーンにしても、ベットのシワはどうなってるかとか、ベットに近くにある小物はどんなものがあるのかとか、ベットと床の高さはどのくらいだとか、それが病院ならそのまわりにある医療機器はどんなものがあるのかとか、ネットや写真集や、映画の1シーンから写真をひっぱりだしてきて参考にしないと私には描けません。
まだまだ未熟者なのです。

絵を描く仕事についている人は、絵を描く前に仕事の80%はすでに終わっているものです。具体的に絵を描くのは残りの20%の部分です。
時間はかかっても、鉛筆を持つ前にすべき80%の仕事を地道にこなしていくことですね。そして日ごろから映画(アニメ以外の)をいっぱい見て、イメージの引き出しをつくっておくことが大事です。

【Q:筆圧は高めと低めどっちがいい?】

はじめまして、松井と申します。
先生の著書では大変勉強させて頂きました。
絵を練習し始めたばかりのころは、ある程度のものが描けさえすればという気持ちでしたが
先生の本に出会い、自分の中の、もっと早くもっと上手い絵を大量に描きたい、動かしたいという気持ちに気づかされ、日毎増大し
年齢も憚らず来年アニメーターの専門学校に通おうかと思っています。

前置きが長くなりましたが本題の質問です。
まず鉛筆の削り方に関してなのですが、僕はカッターナイフを使って削るのです。
芯を長めに露出させてそれを緩やかに傾斜をつけるやり方なので、鉛筆削りほどの鋭い線が出せないのです。
長くそれなりの太さの線が使えるので、便利だと思っていたのですが、どうも調べてみると現場では鉛筆削りが主流みたいですよね。
そこで、どちらが良いのか、意見を聞かせていただきたいのです。
できれば、手で削る感触は手放したくないので、お勧めの削り方などもしあれば是非知りたいです。

それともう一つは、僕の筆圧が恐らくかなり高めだと言う事です
元来ぐりぐりと線を連ねるのが好きな人間なのですが、長期シャープペンシルに逃げていたのも祟りまして、芯が折れる事もままあり。
ここを直すべきか否か、もとい現場での多数派は一体筆圧高めor低めのどちらなのか
主観で結構ですのでご意見頂きたく・・・
必要とあらば、入学までには必ず矯正しておきますので。

長くなりました、拙文申し訳ありません。返答お待ちしております。

【回答】

筆圧はあんまり高くないほうがいいのです。私もやや高いほうだったのでけっこう苦労しました。
アニメーターを目指すときはどうしても、動画からはいるのですが、長い線を綺麗にトレスしないといけない。そのときに筆圧高いと最後まで息がつづかない。髪とか、初めから終わりまですううう~~~~~~~~っと引かないといけないのだけど、筆圧高いと、がしっ、さーーってひいちゃう。最後まで引き終わるまでの忍耐力がつづかない。ここでなかなか困るんだ。

鉛筆に関しては、実際、最近のアニメ界は細い線が主流になってきてます。私達の頃はまだぶっとい線があったのですが、最近はほとんどなくなっちゃいました。なので、中国、韓国などはシャーペン動画が主流になってきつつあります。
そういう私もとうの昔に鉛筆捨てました。今はシャーペンで原画描いてます(苦笑)。ま、これは私自身が描いたものが、表面的な処理ではなく骨格的な表現力の分野なので、鉛筆削る時間が減るかなってくらいなものでした。
でも、『あしたのジョー』のパチンコの原画を少々手伝っているのですが、そんときだけは0.7のシャーペン使います。普段は0.5のシャーペンですけど。

なので、鉛筆の削り方に関しては、特に「何がいい!」なんてないかな。こればっかりは本人が描いた気ものなので、「自分の心に正直に!」がいいんじゃないでしょうか。自分の判断が他人の判断より尊重されるべきです。自分が良いものが良い! 所詮最後はここにたどり着くようにできてるみたいです。

【Qではないけど、このコメントへの返信が勉強になる】

私は美術系の大学に通っていたのですが、パースや遠近法といったものはちゃんとした勉強をせずに、感覚で絵を描いていました。卒業してから基礎的なことを勉強し直そうと思い、パースについてネットで評判のよい本を購入して参考にしながら描いていたのですが、「なにかおかしい、描いた絵に違和感を感じる」ようになりました。学生のころよりも下手になってしまったとさえ思いました。

半年ほど悩んでいたのですが、西澤さんの著書に出会って違和感の理由
がわかりました。画角、カメラの位置、奥行きの圧縮などの概念を持っていませんでした。
それ以来屋外でスケッチをするときにこれらを意識して描いたり、絵の一部分をトリミングして構図をとったりしています。意識するようになって、絵から「雰囲気」を感じられるようになってきました。

私と同じようにパース本を読んで練習する人、特に初めて絵の勉強をする人は奥行きの圧縮などがわからないまま悩んでいると思います。西澤さんの著書、活動が広く知られることを望みます。

【回答】

Jack Vettriano の絵、いいですよ。

この人は画角を調節しながら絵が描けるひとで、描いている絵が映画(レンズで撮られた)の絵みたい。とってもムードあります。

その昔、多分小学生の頃の写生大会なんかの絵ではきちんと<奥行きの圧縮>が描けてたはずなのですよ。遠くにあるものを知らず知らずの普通に望遠で切り取って、奥行きを圧縮して描いていたはずなのですよ。

それがなまじパースなんかをおぼえてしまったから、「これで正しい絵がかける!」ってわらをも掴む気持ちでしがみつくいてしまう。そこできちんと「あれ、これ、何か変・・????」って気づけばいいのだけど、それを説明できる理論がないから、知識で覚えた不完全な一点透視に頼ってしまう。空間認識能力に関する自信の無さからくるんでしょうね。

判る人には「あ、そういうことだったのか!」ってすぐわかるのだけど、判らない人には永遠にわからないという、かなり選ばれた人だけを納得させるデリケートな部分を説明した本。でも反対に、判らない人にとっては、その人が描いている絵の存在価値を脅かす潜在的に恐怖を内包する内容なので、どこまで受け入れられるか・・・。
たぶん我々の業界でも、あの本が怖い人、認めたくない人ってかなりいると思いますよ。
それを理解してくれる人がいてくれることはありがたいことです。

【Q:どうやったら速く描けるようになる?】

はじまして、NOEと申します。
知人よりレイアウトを描くのに参考になるとデッサン講座を進められ、購入させて頂きました。
中身をみて感動しました。
多くのアニメ関連の本が最近は多く出版されていますが、なかなか、画面の収め方を書いた本には出会わなかったので、とてもうれしく思います。
また、西澤様の言葉も胸に響きました。説明の仕方もとてもわかりやすかったです。ありがとうございます。

とてもお恥ずかしいのですが、質問がひとつあります。
アニメーターはスピードだと痛感しているのですが、なかなか描くのが遅いので、どうにか早く描けないかと日々苦戦しています。
画力は足りないのは力をつける他ないとは思っています。後は、脳に思い描くものが手で早く描けるかだと思うのですが、思うように描けないのでなかなか進まない。(うまく説明できてないですかね・・・。)
やはり、これもとにかくたくさん描くしかないのでしょうか。手がもたなくなってきているので、時間的に制約があるのが厳しい状況なのですが…。
助言いただけるとうれしいです。

長くなってしまいましたが、西澤様のこれからのご活躍楽しみにしています。

【回答】

絵を描くスピードは、NOEさんの言うように2つの要素があると思います。
1つは、描きたい絵を早くイメージすること。
2つめは、それを具体的に絵にする画力。
この二つは同等に大事です。

描きたい絵を早くイメージするには、イメージの引き出しを多くもっておくことです。
それには「映画を数多く見る」ことです。つまり実際の画面の引き出しを多くもっておくことが必要になります。
たとえばアップはバスとショットで描くにしても、その背景をどうするのか?ってこと確固たるビジュアルがないとなかなかまとめられるものではありません。そのときに、実際の画面の後ろがどのように見えているのか?というイメージが無ければ、やみくもに、奥の奥まで、ちまちま描き込んでいくことになります。

黒澤明は「アップと撮る時ほど離れて撮れ」と何かで言ってましたが、
離れたところからズームで撮ると、画角がせまくなるので、後ろに余計なものが入り込まない、なのでキャラクターが引き立つのです。
下手なアニメーターが情報を劣化させてしまった漫画やアニメの画面をみるのではなく、実際ものが撮られた画面を数多くみて、映画の画面として雰囲気があるのは、カッコよく見えるのはどんな画面なのか・・、その引き出しを多く持っておくことです。

私は、原画を始めた頃に、「よし、1日1本映画をみるぞ!」って心に決めて、レンタルビデオ屋が劇場に通うようにしまいた。結果的には1週間に5本くらしか見られなかったのですが、それでもそのペースが2年続きました。1週間に5本みれば、1年に約250本。2年で500本になります。これを原画をはじめた最初に2年でこなせたのは、後の絵作りの基盤になってたと思います。

もう一つのポイント=画力を上げることは、もっと具体的な言葉に直すと「理屈に合うように正確に描く」こと。描くスピードが速いか遅いかは、手を動かすスピードではなく、「これ、なにかへん」が多いか少ないかです。「こう描きたいのに、そう描けないいいい!!!」「コンテでこう描いてあるけどそんなの無理だよおおお!!!」みたいな、いろいろ画面内に不都合が生じてきてなかなか手が進まないものです。

それは、最初に描くレイアウトで整合性が確立できているかいないかによるところが大きいでしょう。日本のアニメの場合は、「背景のパースは変えられない」という制約があるので、その範囲内で整合性を整えたレイアウトを組まないといけません。しかし今の演出家や作監ですら、まともに絵作りの理屈が判っている人はほとんどいないし、コンテもそれを判って描かれたものはほとんどありません。なのでアニメーターがレイアウトの段階で、整合性の取れたものに再構築しないといけないという脳内作業がどうしても必要になります。

・レイアウトのなかで、カメラの高さがどこに設定されているのか?
・カメラと被写体までの距離がどのくらいに設定されているのか?
・画角がどのくらいに設定されているのか?
・奥行きの圧縮率がどのくらいに設定されているのか?

これらのことが、最初のレイアウトの段階で整理されてなければ、のちのち絵を動かす時もなかなか思うように動かせないものです。

まったく・・・・・難儀な時代です。

一つアドバイスを上げるとしたら、
「画面の一番手前にあるもののの接地面を横長に描く」ことです。

「一点透視」で描く場合は、<奥行きの圧縮>がないと成立しないように出来てます。
なので、画面一番手前の机がある場合、その接地面(たぶんフレーム外)が横長く見える様に描いてあげれば、画面はかなり安定するはずです。「画面一番手前のものでさえ、きちんと奥行きの圧縮を入れてあるぞ」ということをアピールする絵にしてやれば、被写体とカメラとの距離感を成立させられるわけです。

【さらにQ:一点透視の奥行の圧縮をもうすこし詳しく!】

お忙しい中、アドバイスありがとうございます。
まさか返してくださるとは思わなかったのでとても嬉しいです。

今までは、なんとなくでしか、映画を観ていなかったのでよくわからなかったのですが、意識して観ますと発見できることがたくさんありますね。
私も1週間5本まではいけないかもしれませんが毎日数分でも観ていきたいと思います。

後半のお話、「日本のアニメは背景のパースを変えられない」のあたりですが、この辺りは、本当に難しいです。
説明していただいた内容は、なんとなくわかるのですが実際にやってみてできるか、人のレイアウトを見て、カメラの高さや画角、被写体との距離、奥行きの圧縮を図れるのかといわれますと難しそうです。

しかしながら、説明していただいた内容は本に通じるものがありますので、ひとつひとつ確認しながら知識の引き出しを作っていきたいと思います。
また、最後のアドバイスについては、実際に試してみたいと思います。ありがとうございます。
ちなみに、間違っているかもしれないのですが、「1点透視」にて、カメラ枠の縮小版(1点ではない手でOKサインの大きさぐらい)を大体中央において、そのあたりを焦点と考え描くのは、圧縮した絵とかになるのでしょうか。

また、質問してしまって申し訳ないですが時間があるときに助言よろしくお願いします。

【回答】

「1点透視」にて、カメラ枠の縮小版(1点ではない手でOKサインの大きさぐらい)を大体中央において、そのあたりを焦点と考え描くのは、圧縮した絵とかになるのでしょうか。

>便宜上、そのように消失点をごまかす描き方をすることもあるでしょうが、それと「奥行きを圧縮」させることとはまったく関係ないでしょう。

「奥行きを圧縮して描く」というのは「普通に描く」ということです。足元の正方形のタイルでも遠くにあれば横長の台形に見えます。遠くにあるものは「奥行きが圧縮されて見える」というのは普通のです。

なおかつ、一点透視でも二点透視でも、タテ・横のラインを直線で描く以上、それは「ある程度遠くのもの」であることを意味します。視野のなかの端の方(眼球が球体なのである程度補正はされてますが)はどうしても曲線で構成されています。それを直線で代用するわけですが、直線で代用しても、整合性が崩れないのは、ある程度遠くにある画ということになってしまいます。
ある程度遠くにある以上、<奥行きの圧縮>は画面の中の構成要素として当然入ってきます。

ではどのくらいの圧縮が必要になるか?ってことが次の問題になってきます。

一点透視で立方体を実際に描いてみてください。
けっこう難しいものです。一点透視図法では、<奥行きの圧縮>が不可欠なのだけど、2:1くらいの圧縮比では全然足りないのです。
4:1とか5:1くらいにま圧縮してないと立方体には見えません。
大切なのは「”このくらいまで”圧縮しないと一点透視は成立しない」ということ知ることです。
これがわかっている人がなかなかいないのです。

【Q:最近は映画や漫画を見る人少なくなってる??】

最近の若いアニメーターやアニメ業界に入りたいと思っている方々で映画や漫画をそれまでにたくさん見てきている読んでいるという人は昔に比べ少なくなっているのでしょうか?

【回答】

漫画やアニメばっかりですよ。なかなか映画を見てるって人がいなくって・・・、なので絵がどんどん幼稚になってるきがする。
紙芝居の絵としてなら描けるけど、実存する空間として絵が描けない人がやたらと多いような気がします。
たとえば、雨の夜に車が走ってるカットを描くとすると、普通に車が走ってくるだけにしか描けない。どこかのアニメでそう描いてあったからそう描いた・・って絵ばっかりなんだ。でも、きちんと映画をみてると、地面にヘッドライトの映り込みがのびてることに気づく。
コンテで描いてあるそのシーンを、実存する空間・実存する芝居としてイメージできないまま描いた・・って絵ばっかりなんだ。なので絵に存在感がないものがおおい。困ったもんだ。

【Q:マンガを模写するときの精度はどこまで上げる??】

西澤さんの書籍で、「漫画を1月1冊ペースで模写するとよい」とあったので実行してみようかと思っているんですが、どれくらいの精度で模写すればよろしいでしょうか?
時間をかければ ほぼ完ぺきな模写はできるんですが、それではとてもじゃないですがペース的に不可能になってしまいます・・・。
答えていただけると嬉しいです。

【回答】

とりあえず一本の線でまとめるくらいでいいと思いますよ。気に入らないから部分を何回かひいてみて、それで納得したら次・・ってくらいでいいんじゃないでしょうか。クリンアップまでは必要ないけど、ちまちました線でかいてもちっとも上手くならない。

あとは模写する素材だよね。少女漫画だとキャラクターだけでになりがちだから、あんまり絵を描くちからはつかない。空間のなかにきちんと存在してその絵が整合性が崩れていない絵を描ける人のものを選ぶことだよね。

うちに入ってきた新人の動画マンたちには次の段階にはいってて、映画の画面をキャプチャーして、それの模写を1日1枚やらせてます。実存する空間のなかに実存するキャラクターを描く。
動画をへて原画になると、レイアウトがとれないといけない。
その一歩でどのくらいキャラクターが小さく/大きくなるのか、その空間がどれくらい奥行きが圧縮されているのか、実際の画面はどのようなものなのか、それをきちんと整合性ととのえて描けるように。それが出来てはじめてその空間で、動きが描けるもので、ま、今から修行させてます。

【さらにQ:おすすめの作家さんは?】

描く題材ですがおすすめの作家さんとかいらっしゃいますでしょうか?自分はBLACK CATという、ジャンプで連載していた矢吹健太郎さんの作品がいいのでは と思っているんですが・・。整合性がとれているか等がよくわからないんですよね↓

30秒でどんどん絵を描き上げていくという練習をして以前よりは描けるようになってきたのですが、奥行きの表現にはとても苦労しています。奥行きの表現ができないと動きのない単調な絵になってしまうんですよね↓

【回答】

矢吹健太郎さんは、キャラを描いているひとで、キャラの後ろに背景があっても、そのキャラクターがいる世界を描いてる人ではないと思いますよ。
わたしは一にもニにも『ガンダム』の安彦良和さんすすめます。
あと能上純一さん。この人は望遠は描けないのだけど、服のシワとか、日本人の顔とか、実に上手い。
アニメ的で描き易いのは浦沢直樹もいいかな・・・。

まとめ

【西澤さんがおすすめする模写の題材】

  • 安彦良和:照明など映画を意識しているっぽい
  • 浦沢直樹:キャラのバリエーションが豊富
  • 能條純一:『哭きの竜』『月下の棋士』:日本人の顔がうまい
  • 小畑健:『ヒカルの碁』『デスノート』
  • あだち充:コマ割り、総合的な見せ方がうまい
  • 大島やすいち:『バツ&テリー』:動きのダイナミズム
  • 安彦良和:ガンダム

【絵を上達させるために!西澤さんの言葉】

  • 全体的にタッチや効果線でごまかしててるひとはダメ
  • 「この絵は良い」って思ったら最後、その絵は自分が越えるべき目標になる
  • ジン・G・カム(Jin.G.Kam)が好き。
  • Jack Vettriano の絵、いいですよ。
  • 想像できないものは描けない。引き出しを増やすために映画を見よう!
  • 筆圧はあんまり高くないほうがいい
  • 速く描くのに必要なのは、描きたい絵を早くイメージすることとそれを具体的に絵にする画力
  • 不完全なパースに頼らず、奥行きの圧縮を意識しよう
  • 実在する空間を意識する
  • マンガを1月に1冊模写する。精度は一本の線でまとめるまでは上げる。

データ・リンク

西澤さんについて(@wiki)→https://www18.atwiki.jp/sakuga/pages/1027.html

西澤さんの掲示板(運営は終了していますのでその点はご注意ください)→http://www3.ezbbs.net/cgi/bbs?id=ssm2438&dd=12&p=6

西澤さんの本→リアルなキャラクターを描くためのデッサン講座

スポンサーリンク

コメント

タイトルとURLをコピーしました